私が高校生の時に猫を拾った。
私たちは猫を飼えることが嬉しかったけど、
その猫は生涯毒父に虐められ、
人に甘えることも知らずに、
死んでしまった。
かわいそうなミー
ももこ、野良猫を拾う
高校の帰り道、薄暗くなっていた。
いつも一緒に帰る友人、アキコと小川にかかる橋を渡った時、
アキコが、『猫の鳴き声がする!!』と叫んだ。
そう言われれば、聞こえるかも・・・
子猫の声みたいだ。
でも、内心、私は困ったことになったなって思った。
毒父は、何か新しいことを私たち子供がするのをすごく嫌っているから、猫なんか拾ったなんて言ったら、またひどく怒られるし、絶対殴られる・・・
ていうか、毒父になんて言ったらいいんだろう。
できれば、猫なんか拾いたくない。
こんな風に思ったんだ。
だから、アキコが川の方に降りていくのを、複雑な気持ちで見ていた。
私は積極的に子猫を助ける気にはなれなかったのだ。
彼女がズンズン進んでいくので、仕方なく私も後を追う。
すると、川の淵にずぶ濡れになった段ボールが引っかかっていて、そこに子猫が三匹くらい入っていた。その中で泣いているのは、一匹だけ。
後の二匹はもう死んでいるように見えた。
アキコがこの子を持って帰ろう!!って言ってすでに抱き上げていた。
あああ、どうしよう。。。困ったことになった。
残酷だけど、私の頭の中は父親にどうやって説明しようっていうことでいっぱい。
アキコはすでに猫を一匹飼っていて、もう一匹飼うのは難しいという。私も、うちは親が厳しいから無理だと言った。こんな小さな猫、どうやって飼ったらいいのかもわからないし・・
この後、どうやって家に帰って、その日は猫は家に来たのか、アキコの家にいったのか、全く覚えていない。でもとにかく私は親に話したらしく、猫がもう少し大きくなるまではアキコの親が育ててくれて、そのあとに家に来ることになった。
親に何をどうやって話したのか、全く覚えていない。
でも、家を建てて3年くらい経過していて、親も動物を一匹くらいは飼ってもいいかもって思っていたのかもしれない。
以前の犬の話も流れてから年数たっていたし。
いよいよ猫が家にやってきた
ある程度大きくなったので、とは言ってもまだ子猫でミルクも飲んでるけど、とにかく毒父を車で猫を迎えにアキコの家へ向かった。
猫は、ハチワレの黒白で本当に可愛かった。子猫だし、小さくて、、じゃれてくる。
ミルクをまだ飲んでいた。
でも、毒父は汚いから触っちゃダメだと言って、猫を抱いてミルクを飲ませることはできなかった。家畜に飲ませるみたいに、やるのだ。
私は可愛い猫を抱っこしたくてたまらなかった。
でも、それは許されることではなかったのだ。
そういう風にして、人とのスキンシップを一切知らずに大きくなったミーは、人に触られるのを嫌がる猫になった。
少しでも体に触れられるとシャーッとひどく威嚇する猫になってしまった。
ミーは凶暴な番犬みたいになってしまい、来客があると玄関にすっ飛んで行って、シャーシャー威嚇するような猫になってしまった。体格もオスで大きかったので、みんな怖がっていた。
毒父は私たちを虐めるように猫のことも虐めた
毒父はみーを捕まえて、よく高い高いをしていた。毒父的には遊んでいたつもりなのかもしれないが、猫的には死ぬかもしれないという酷い恐怖を味わったはずだ。
父は猫を天井に向かって放り上げ、天井に頭がつくまで放り上げ、それを何回も繰り返す。
私たち子供は、やめてよ、やめてよ!!って泣きながら叫ぶんだけど、毒父は止めない、もちろん。
ますます楽しそうに続けるだけだった。
他にも、毛布とかで猫をぐるぐる巻きにして、上からぎゅうぎゅう押さえつける。なんのためにこんなことをしていたのか、今となっては全く理解できない。ちなみに毒父は弟に対しても全く同じやり方で虐めを繰り返していた。
猫のミーにとっては私たち同様、家にいることは安全でもなんでもなかった。
私は自分の猫が来たって最初思ってたけど、しつけとか世話について全部父親が仕切っていたので、もうどうにもならないと諦めて、猫に愛情注ぐのを止めた。猫に対する心も離れていった。
そうしないと、辛すぎて自分の心が耐えきれなかったんだろう。
よく怪我をして帰ってきたミー
田舎だったから、よくミーを外に出していた。その度に、近所の猫と喧嘩したせいか、怪我をして帰ってきた。
毒父は病院に連れていくが、その後の怪我の消毒や、ガーゼの交換を率先してやっていた。私たち子供にやるように。
不必要に、ゴシゴシ消毒液を塗り込み、傷口を触り、楽しむのだ。
その度にミーは叫んでいた。
いたいよ、いたいよーって。
かわいそうだった・・・・
晩年、ミーは、外に出た時に、人間に鍬みたいなもので頭部を突き刺されたらしく、頭蓋骨にぽっかり穴を開けて帰ってきた。びっくりした親は病院に連れていったけど、それからしばらくミーは生きたけど、結局その傷が原因で死んでしまった。
ミーは家に来て不幸だった
私はよく考えた。
ミーは家に来て幸せだったのかなあ?
あの時、拾われたよかったのかなあ?
もしかしたら、拾われずに、兄弟と一緒に死んだ方が楽だったんじゃないのかな?って私は悩んだ。
ミーは、猫として人に甘える楽しさを知らずに何が楽しみで生きていたんだろう。家にいたらご飯はもらえたけど、猫としての生活は決して充実したものではなかったと思う。
家の中にいても、毒父がいつ虐めてくるかわからないし、逆に野良の方が、そういう脅威からは逃げられるわけだから、やっぱり拾われない方が良かったんじゃないか・・・
そして毒父のいじめを止められなかった自分も嫌だった。でも、自分も毒父にいじめられていたし、毎日殴られて、もうどうしたらいいのか、全然わからなかった。
ミーは、もうとっくに新しい猫に生まれ変わってると思うけど、2回くらい生まれ変わったのかなあ。
その後の人生はどうだったんだろう。
せめて、家よりも良い家庭の猫になっていてくれたら、と祈ることしかできない。
ちっちゃい頃の猫のミー
大人になって猫三匹も飼ってやった
子供の頃からすごい動物好きだったのに、全然飼うことができなくて、せっかく飼ったミーは可愛がることができなかった。
39歳の時にやっと自分だけの猫を飼うことができた。バイト先の動物病院に引き取り手がいなくてずっと居候していた兄弟猫。
二匹ともストルバイト陽性で、療法食が必要だったけど、もう2年も里親が見つからなくて、自分はこういう行き場がなくて病気の子こそ、引き取るべきだなって思った。
一匹は、子供の頃の猫風邪が原因で角膜に傷があって片目がよく見えないみたいだったけど、そういうのも可愛い、と思えた。
それから1年後、もう一匹を大学から引き取った。
この子は、実験に使われていた子でやっぱり引き取り手がいなかった。真っ白くって、人懐こくって、ハンサムな顔立ちで、一目惚れだった。
今はこうして三匹の猫に囲まれて、怒鳴り声にビビることもなく、生活できて当時のことを思い出すと幸せなのかもしれない。
なんで今日この話を書いたかっていうと、沢山の猫がドブに捨てられていて、でも、それを助けようとしなかった自分の夢をみたので。。
ミーを思い出したのです。
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